著作権について by CSS Nite in Ginza, Vol.47

CSS Nite in Ginza, Vol.47 「守りの著作権から、攻めの著作権へ〜広がる新しいコンテンツビジネス~」に参加をしてきました。

今回のCSS Niteはロフトワークの林 千晶さんと弁護士の岩瀬吉和さんによる著作権のお話。「著作権」という興味はあるけど、必要に迫られないと学ぼうと思わないテーマのお話を聞けるのはよいですね。

以下、覚書です。不正確な情報等ありましたらご指摘お願いいたします。

これからの時代、インターネット上でソーシャルなサービスを展開する上での著作権というのが非常に重要になってきて、著作権を知らずにソーシャルなサービスを作成するというのは難しいです。

まずは、著作権の成り立ちから。

著作権は1440年代にヨハネス・グーテンベルクが活版印刷を開発した際に著作権の概念が生まれました。
もともと印刷により複製するための権利で、印刷物に対しても出版社の権利を守るもの為のものでした。

出版社から製作者へ

フランス革命により、もともと出版社の権利を守る著作権(copyright)から、著作者つまり著作物を作成した人への権利(right of auther)に変化していきます。

1886年にスイスでベルヌ条約が締結され国際的な著作権の取り決めがなされました。ベルヌ条約は現在136カ国での著作権法で利用されており、無方式主義(著作物が発生した時点で発生する権利)、著作者人格権の保護(著作権は他の人に譲渡できない)、著作権の保護期間(著作者の生存中、死後50年)などが定められています。

後半の質疑応答であったのですが 、著作権の保護期間は実際には死後50年とは限らず、「戦時加算」というものがあって第二次大戦中の連合国の著作物に関しては+25年の75年たたないと、著作権の影響を受けます。
(to-R補足:wikipedia(戦時加算 )によると、「戦時加算」の最大日数は12年程度なので、他の条件などあるかもしれません。)

日本の著作権

日本では、世界と比較しても著作者の権利を強く守っている国です。

1899年に日本がベルヌ条約に加盟し著作権法が施行されましたが、日本はローマで行われた著作権法の会議でアジアで初の副議長国になっており、そのこともあり非常に著作者の権利について尊重する考えになっていた為です。

著作権の難しさ

他の知的財産権との違いがわかりにくい(特許権、実用新案権、意匠権、商標権など)。

例えば写真を撮って、その写真に建物と女の子が移っていた場合。写真の著作権は撮った人のものだけれでも、建物の著作権は建物の作成者(設計者)のもの。女の子に関しては肖像権や未成年の場合また別の権利などが発生してしまう。

著作権と著作者人格権の関係が難しい。

著作権は譲渡できるが著作者人格権は譲渡できない。
著作権の譲渡に関しては、著作権などの譲渡可能な各種権利は譲渡し、著作者人格権などの譲渡不可能な権利に関しては行使しない。などの契約が必要。

著作物の定義があいまいでグレーゾーンが多い。

独創性があるかどうかで著作権が発生するが、定義があいまいな為、裁判をしてみないと著作権が認められるかどうかがわからない。

インターネット時代の著作権

2010/1/1まではYouTubeやGoogleは日本では違法だった。(著作物をコピーしている為)
2010/1/1より著作権法の改定によりキャッシュに関しては合法化されました。

2010年で日本の著作権はこのレベル。著作権がネックになり新しいサービスなどを行いにくい。

従来の著作権はプロとプロが結ぶ契約だったが、インターネット上ではすべての利用者が発信者になれ、著作権の意味が変わってきた。

アメリカではDMCA(Digital Millennium Copyright Act)が施行されており、既存の著作権法とは異なり疑わしきは罰せず、問題があった場合に対応すれば罪には問われない。

クリエイティブコモンズ

自由なコンテンツの流通を促進する仕組み。

All Rights Reserved. →Some Rights Reserved.

クリエイティブコモンズは4つの条件で示す。

  1. 表示
  2. 非営利
  3. 改変禁止
  4. 継承

自由度を設定できる。

クリエイティブコモンズの コモンズ証を発行することでライセンス条項へのリンクが発生する、メタデータなどをページに埋め込むことで検索エンジンなどでクリエイティブコモンズが利用されるようになる。

問題点としては、アダルトサイトなど著作者の望まない形で再利用されるのを防ぐすべがない。(ただ、望まない形での再利用よりかは望む形での再利用のほうが圧倒的に多い)

(to-R補足:懇親会の際に岩瀬さんよりお伺いしたのですが、コモンズ証を発行するとその有効範囲はページ全体に及びます。本文だけのCCにしたつもりが、ロゴやメインビジュアルなどページで使われている素材までCCになってしまう。)

まとめ

多くのプロダクトは先人が培った知識と知恵によって成り立っている。
著作権を守るのも大事だが、知識や知恵をシェアすることによって、これからもっと多くのものが産まれ、もっと豊かになれる。ただし、著作者へのリスペクトは忘れてはいけない。

質疑応答

Q.WEBサイトなどのCopyright表示は必要か?

A.なくても大丈夫だがあった方が裁判などで有利に働くことがある。

Q.Copyright表示に年表示は必要?

A.なくて大丈夫。これは昔一部の国で年表示が必要だった名残。

Q.著作権の裁判では著作者の権利は保護されるのか?

A.日本においては半分以上の場合は保護されない。著作物を真似したということの証明が難しいケースが多い。例えば地図の会社の場合存在しない路地を用意しておき、そこも含めて複製されている場合などに著作権が侵害されたと認められる(トラップの設置)。

Q.ネットでよく問題になっている事例は?

A.画像以外では音声なども。レイアウトなどは著作権として認定されにくい。

Q.著作権が切れた亡くなった画家などの作品を再利用するのはOK?

A.自身で写真を撮ればOK。ただしネットに出回っている写真などは写真を撮った人の著作権が発生しているケースがあるので注意が必要。

Q.ネットで公開されている著作者不明のコードやソースは使ってよいの?

A.著作者が著作権を持っているので勝手に使っては駄目。ただし、公開されていることで著作者が「黙示の許諾」を行っていると解釈できる場合には利用しても大丈夫。多くのケースが「黙示の許諾」で解決できる。

近く、CSS Nite公式サイトで資料、音声が公開されるはずですので興味がある方はそちらもご確認ください。

ご登壇された林 千晶さん、岩瀬吉和さん、非常に為になるお話しをありがとうございました。

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